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「なが〜い歯科治療」
「あっ、カゼひいたかもしれない」とか、「ど〜もおなかをこわしたかも」と考えて、心もち重たい医院のドアを開ける。○○ドラッグや、△△薬局で高価な薬を何度も買った結果である。はじめっから××医院の受付に行けばいいのに、なぜか、我々は薬局へ行くのである。
この心理の底には、医者に行って何か大きな病気を見つけられるのではないか、というある種の不安感があるのだろう。
そんなことを考えつくのは、私もただの一人の人間で、職業として歯科医師をやっているのだから、専門以外のことになると同じ心理状態になるのでよくわかるのである。
だから患者さんに、「どうされましたか」と優しい口調で(元来口べたな人間なので相手が優しいと思うかどうかはわからないが)聞くと、ほとんどの相手は、「い、いや、どうってことないんですがね、いや、なんともないんです。」と答える。
なんでもないなら来ないよね、と思っていると、「いや、実はちょっと・・・」と言い、「この1週間くらい前からちょっとこのあたりが腫れてましてね、いや、ど〜ってことないんです。ちょっとなんです、ちょっと。」
と極めて控え目に、謙虚な人間になってしまう。「それじゃあ、お口の中を拝見させていただきます」と言って、口腔内を見ようとすると、反対側の方向に向かって口を開ける。さらに謙虚な人になると、横を向きながら少しだけ口を開ける。
こんなことを書くと、何か患者さんをバカにしているように聞こえるかも知れないが、本当のことを言えば、私も同じことをしているのである。
「はい、ネクタイを緩めて下さい。ワイシャツをたくし上げて」と言われても、ネクタイをほんのちょっとだけ緩めて、ワイシャツのたくし上げもごく少ししかしない。
「それじゃあ、見えません。もっとまくり上げて下さい。」考えてみるに、ネクタイを十分に緩めても少し緩めてもそれに関係なく、体に問題があるなら、病気の原因を調べられてしまう。
そんな心の底の動きは私も体験していることだからわかるのである。
医院に治療に行くと、一度か二度の通院で終わる。もちろんそれは軽い病気の時で、長期間の通院を余儀なくされることも当然のようにある。
しかし歯科の治療はほとんどの場合が長い期間を要する。
それは細かい作業を要求され、自力で治る力の弱い組織を相手にするために起こるのである。
「あそこの歯医者に行ったら、すぐに終わったのに、ここに来たらずいぶん時間がかかるじゃない」という患者さんもいるが、我々からすると、時間と手間がどうしても必要なのだ。
手抜きをせずに一歩一歩正確な治療を目指すなら、どうしても長い治療にならざるを得ない。
その効果は、その後何十年という間に現れてくる。
しかし、口の中はばい菌のすみかだから、正しいブラッシングを怠れば、その結果は悲惨なものになる。
皆さんが治療期間に耐えてその結果を良好に保つことを望むなら、定期的な検診と、ブラッシングは欠かすことが出来ない。それだけは間違いのない事実である。
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